血小板が多い

健康診断などで血小板が多いことを指摘されご心配されている方へ、血小板増加についての考え方、診断について解説したいと思います。それぞれの病気の説明、治療方法などについては別の機会に解説します。

《そもそも血小板って?》

血小板は出血したときに血をかためる成分です。血液の工場である骨髄の中には巨核球と呼ばれる細胞があり、この細胞質がちぎれてできたものが血小板です。

血小板が少なすぎると出血しやすくなり、多すぎると血液が固まりやすくなります。脳梗塞や心筋梗塞では血液の塊ができることで血管がふさがり、その先の血流が悪くなり脳細胞や心筋細胞が障害を受けてしまいます。少なすぎても多すぎてもいけないのです。

《血小板数の正常値と血小板増加症について》

血小板数の正常値は15~45万/μLです。

血小板増加症とは血小板数が45万/μL以上のことを指します。

なお、2020年度の人間ドック学会の基準値では14.5~32.9万/μLを正常、40万/μL以上を精密検査の対象としています。(異常のありそうな方を早めに見つける、という目的でこのような数値設定になっているものと思います。)

参考;人間ドック学会の検査基準値

《こんな患者さんは緊急受診しましょう》

〇血小板数が多いときに一番の問題は上記の血栓症を起こすことです。肺や心臓の血管に血栓が詰まると息が苦しくなったり胸が痛くなったりします。血小板が多いと指摘されている方でこのような症状がある方はすぐに受診しましょう。

〇血小板数が多くなりすぎると血小板と血小板をつなげる「のり」となるフォン・ヴィレブランド因子という成分が消費され無くなってしまいます。そうなると血小板数が多すぎることで出血しやすくなります。出血が止まらない、という場合にも緊急受診が必要です。

〇症状がなくても血小板数が100万/μLを超えるときには血栓や出血が起きやすい状態と言えます。早めに受診しましょう。

《血小板が多くなる原因は?》

血小板数が多くなる原因は大きく分けて3つが考えられます。

健診結果で心配で調べている方の中にはすぐに「本態性血小板血症」という血液腫瘍がヒットして不安を募らせている方も多いと思います。しかし本態性血小板血症は10万人あたり0.2~2.3人と非常にまれな病気で、多くの方は➀の鉄欠乏や炎症によるものです。

➀血液以外の原因があり血小板が増えてしまう場合(反応性血小板増加)

〇鉄欠乏、出血などで血液をたくさん作っている場合

血小板と赤血球は共通する前駆細胞から作られます。このため赤血球がたくさん作られるようなときには血小板が増加することがあります。月経のある女性では鉄欠乏により血小板が増加することがよく見られます。

〇炎症がある場合

感染症やリウマチなどの膠原病、外傷、腫瘍などがあるときにはサイトカインという炎症を起こす物質が体中に放出されます。これが巨核球を刺激し、血小板数が増えます。

➁血液が腫瘍になり血小板が増えてしまっている場合

➀とは異なり血液の工場の中で問題が起きている状態です。このため以下の診断をする際には骨髄検査が必要になります。

〇骨髄増殖性腫瘍

造血幹細胞と言われるすべての血液のもとになる細胞に異常が生じて血液全体が増えてしまう病気です。この中には慢性骨髄性白血病、真性赤血球増加症(真性多血症)、骨髄線維症、本態性血小板血症があります。(ほかに非常にまれな病気として慢性好中球性白血病、慢性好酸球性白血病、分類不能型骨髄増殖性腫瘍があります。)

骨髄増殖性腫瘍を疑った場合、まず慢性骨髄性白血病を除外します。この病気はBCR/ABLという特徴的な異常を持ち、チロシンキナーゼ阻害薬(グリベック、タシグナ、スプリセル、ボシュリフ)が非常に良く効くためほかの病気と対応が異なるからです。

参考;国立がん研究センターがん情報サービス

次に真性赤血球増加症の可能性を考えます。この病気はJAK2V617FあるいはJAK2 exon 12と言われる異常により赤血球増加のアクセルが踏みっぱなしになる病気です。病気の名前からは赤血球だけが増えそうな印象ですが、血小板が増えることがあるため、真性赤血球増加症を疑って評価をしていきます。JAK2V617Fについては真性赤血球増加症の95%以上にみられる異常でクリニックで調べることが可能です。

この2つではなかった場合に本態性血小板血症と骨髄線維症を疑います。というのも診断する際にはほかの血液腫瘍ではないことを証明する必要があるからです。

本態性血小板血症、骨髄線維症とも原因は不明ですが、JAK2、CALR、MPLという遺伝子異常を持つことがあります。「遺伝子異常」=「本態性血小板血症」あるいは「骨髄線維症」とは言えませんが、➀の反応性血小板増加症ではないことがわかります。

本態性血小板血症の場合、特徴的な巨核球が骨髄中に増加し、血小板が増加します。病気の性質としてすぐに血栓を起こすわけではないことから個人的には以前の診断基準のとおり血小板数60万/μL以上の場合に疑えばよいのではないか、と考えています。一方で早期の骨髄線維症と区別することは非常に重要です。

骨髄線維症の場合は異常な巨核球や顆粒球が増え、骨髄が線維化(カチカチになる)し血液を骨髄の中で作れなくなってしまいます。血液を作る場が脾臓に移るため脾臓が腫れていきます。この病気は骨髄増殖性腫瘍の中でも重症化しやすい病気のためしっかりと診断し治療を検討することが重要です。

〇骨髄増殖性腫瘍以外の血液腫瘍

5qを欠損した骨髄異形成症候群、骨髄異形成症候群/骨髄増殖性疾患、急性骨髄性白血病の一部でも同様に血小板が多くなることがあります。

 

➂その他

脾臓摘出後:血小板の寿命が長くなるために血小板が増えます。

家族性:TPO、MPLという血小板を作るのに必要な遺伝子が活性化するような家系の方では血小板が増加することが知られています。(見たことはありませんが…。)

《まとめ》

血小板は血を止めるために大切な血液成分です。しかし増えすぎると血栓症の危険が出てきます。多くは反応性の血小板増加ですが、中には血液の病気のこともあります。血栓症や出血の症状がある、血小板100万/μL以上の人はすぐに大きな病院を受診し、そうではない方は(可能ならかかりつけの先生に炎症や鉄欠乏の評価をしてもらい)血液内科を受診するようにしましょう。

参照:up to date Topic 6682 Version 28.0,  WHO Classification of Tumours of Haematopoietic and Lymphoid Tissues ほか

多血症(血色素が多い)

健康診断などで血色素(ヘモグロビン(Hb))、ヘマトクリットが高いことを指摘されご心配されている方が多いことと思います。ここでは多血症についての考え方、診断について解説したいと思います。

《赤血球の検査の見方について》
まず血液検査の中で赤血球の検査についてお示しします。赤血球数、ヘモグロビン(Hb)、ヘマトクリット(Ht)は以下の関係になります。

赤血球数:血液1マイクロリットルあたりの赤血球の数。
Hb(血色素):全血液中のHb(赤血球の中にある酸素を運ぶたんぱく質)の量を計ったもの。低くなると貧血。
Ht:全血液中の赤血球の容積率。
血液を遠心分離すると血液は下のように分かれ、重い赤血球は下の方に集まります。Htは図の赤矢印÷黒矢印、つまり全血液中の赤血球の割合ということになります。

《多血症の基準とは?》
多血症の診断基準は以下のようになります。
男性 ヘモグロビン(Hb) > 16.5 g/dl、ヘマトクリット(Ht) > 49 %
女性 ヘモグロビン (Hb)> 16.0 g/dl、ヘマトクリット (Ht)> 48 %

ヘモグロビン、ヘマトクリットのどちらか一方が越えていても多血と診断されます。赤血球数は基準には含まれません。
ちなみに2020年度の人間ドック学会の基準では
男性ヘモグロビン 正常:13.1~16.3 軽度異常:16.4-18.0 要医療:18.1以上
女性ヘモグロビン 正常:12.1~14.5 軽度異常:14.6-16.0 要医療:16.1以上
と男性において軽度異常の中に多血症が含まれてしまう、という矛盾があり注意が必要です。

《まず相対的な多血を除外しましょう》
カルピス🄬をご自宅で作るときに水が少なければ濃い味になります。
これと同じで脱水状態で採血をすると血漿成分が少なくなり血液が濃縮し多血になります。
相対的な多血とはこの状態(図:中)です。
よくあるのは嘔吐や下痢をしたあとの採血ですが、健診のとき前日の夜からまったく水を飲まずに採血すると同様の結果になることがあります。喫煙やいわゆるストレス多血症でも同じことが起こります。

左:正常 中:相対的多血 右:真の多血

来院される方の大多数はこの相対的な多血の状態と考えられます。まず水分補給をしっかりと行い、喫煙はやめるようにして検査してみましょう。

 

《真の多血症は2つにわけて考えます》
真の多血症は図右のように本当にヘマトクリットが増えた状態です。実際に赤血球が増えています。原因を2つにわけて考えます。

1.造血機能以外に原因があって多血になっている場合
➀低酸素が原因になっている場合
スポーツ選手が高地トレーニングをすると、身体は酸素を運ぶヘモグロビンが増えるように順応します。同じように心臓や肺に病気がある場合など身体の中で低酸素の状態がおきるとヘモグロビンが増えてしまいます。
また、タバコを吸う方はタバコの燃焼によって生じた一酸化炭素がヘモグロビンと強固に結合してしまい、実際に働けるヘモグロビンが減少し低酸素を起こす場合があります。

最近よく目にするのは睡眠時無呼吸症候群による多血の患者さんです。夜に呼吸が止まり低酸素の状態となることで多血症になってしまいます。

参考:睡眠時無呼吸症候群(当院Blog)

➁エリスロポエチンを過剰につくってしまう場合
赤血球を作ることを促す物質(サイトカイン)であるエリスロポエチンは腎臓で作られます。
腎臓に行く動脈で動脈硬化が起こることで腎臓が低酸素になるとエリスロポエチンが過剰に作られ多血になることがあります。

また、エリスロポエチンを作る腫瘍がある場合にも多血症になります。肝細胞がん、腎がん、血管芽腫、褐色細胞腫、子宮筋腫などが代表的な腫瘍です。

2.造血機能そのものがおかしくなっている場合(真性赤血球増加症などの骨髄増殖性腫瘍)
赤血球のもとになる造血幹細胞に、主にJAK2V617F(95%以上)という異常が生じることで身体の制御を超えて赤血球が増えてしまう病気です。多血症と調べるとまずこの病気が出てくると思いますが、1年に10万人あたり2人程度と非常にまれな病気です。この病気の場合、ただ赤血球が多いだけでなく、血栓を起こしやすいため抗血小板薬の内服、しゃ血(血を抜く)治療などを行います。
参照:骨髄増殖性腫瘍患者・家族会「真性赤血球増加症Q&A」

《多血症ではなにが問題でしょうか?》
多血症では過剰な赤血球の増加により血液がドロドロになることで脳梗塞、心筋梗塞などの合併症が起こる場合があります。
また、真の多血症を起こす原因の中には心臓や肺の病気、睡眠時無呼吸症候群、がんなどが含まれます。これらは放置することで命に関わる場合もあります。

《まとめ》
多血症はヘモグロビン、ヘマトクリットが増加する状態です。
脱水によって起こる「相対的多血症」と赤血球が本当に増えている「真の多血症」があります。
真の多血症には何らかの原因があり多血となる場合、赤血球自体が腫瘍になる真性多血症があります。
重要な病気が隠れている場合もあり放置せず血液内科に受診することをお勧めします。

参考
up to date :Diagnostic approach to the patient with polycythemia

花粉症

《花粉症とは》

花粉症は、アレルギー疾患の一つです。アレルギー疾患にはアトピー皮膚炎や喘息、アレルギー性結膜炎などがあり、これらにかかっている人や家族にそういう方がいらっしゃる方は他のアレルギー疾患も起こしやすいことが知られています。

花粉症の原因となる花粉には主にスギ(2~4月)やヒノキ(3~5月)、イネ(5~9月)、ブタクサ(8~9月)などが知られています。花粉が鼻や目に入ってくると、人体の粘膜にもともといるマスト細胞からヒスタミンやロイコトリエンという物質が放出されて、鼻や目の血管・神経を刺激して、くしゃみや鼻水・鼻づまり、眼やのどのかゆみが起こります。更には、皮ふのかゆみや副鼻腔を引き起こすこともあります。

原因の正確な評価には、皮膚反応試験、誘発試験が有用ですが、血液検査でも大まかに調べることができます。

 

《花粉症の治療にはどんなものがありますか?》

治療として、次のようなものがあります。治療は症状が出始める前、つまり花粉が飛び始める頃より前から始めるのがおすすめです。

1.お薬による治療 <症状をおさえたり、軽くしたりする>

・飲み薬:

①抗ヒスタミン薬:アレルギー治療の基本です。現在主に使われているものは第2世代という眠気や沈静作用の少ないタイプです。1日1回のタイプや2回のタイプがあり、効果の強さも色々なものがあります。

主な副作用として眠気(最も多い)・頭痛・吐き気・めまい・だるさなどがあります。車を運転する方や仕事で高所作業をする方には運転制限のない薬を選んで処方します。

➁ロイコトリエン拮抗薬:鼻づまりへの有効性が高いお薬です。喘息の治療にも使われます。

➂遊離抑制薬:ヒスタミン、ロイコトリエン、プロスタグランジンなどアレルギー反応に関与する物質が出ていくのを防ぐ薬です。妊娠中に使えない薬も含まれます。

④ステロイド薬:非常に症状が強い場合にはステロイド薬の短期内服を行う場合があります。

・点鼻薬:鼻にたらすタイプやスプレーするタイプのお薬で、鼻水の症状が強い方におすすめです。

・点眼薬:目のかゆみが強い方には、点眼薬の使用もおすすめします。

・貼り薬:最近発売された新しい治療法で、1日1回貼りかえるタイプのお薬です。他のお薬と共通の副作用以外に、このタイプでは貼ったところが赤くなったりかゆくなったりする副作用があります。

 

☆次の3つの治療は、アレルギー専門医への紹介が必要となりますが、ご希望の方は医師におっしゃってください。

2.アレルゲン免疫療法(特異的減感作(げんかんさ)療法) <花粉症の治癒をめざす>

症状を和らげるお薬による治療とは異なり、花粉症の原因物質(アレルゲン)を少しずつ体に入れて、アレルゲンに対する体を慣れさせていく治療法です。ただし、スギ花粉症とダニアレルギーにしか使えません。治療には数年かかりますが、治癒や症状がない期間を長くできる効果が期待できます。デメリットは、治療に通院の手間と時間が多くかかることや、花粉の時期以外も通院が必要なこと、喘息やじんま疹などの副作用が出る可能性があることです。このアレルゲン免疫療法には、次の2種類があります。

①皮下免疫療法

病院で皮下注射をします。初めは1週間ごとの通院で、徐々に2週間、1ヶ月と通院間隔がのびていきます。メリットは毎日のお薬がいらないこと、デメリットは最初は通院回数が多いこと・注射なので痛いことです。

②舌下免疫療法

舌の裏に液体や固形のお薬を置きます。通院回数が少ない(1か月に1-2回)、皮下免疫療法よりは喘息やじん麻疹などの副作用が出る頻度が低いというメリットはありますが、デメリットは自宅で毎日お薬を使わなければならないということです(12歳未満ではおこなえません)。

https://www.torii-alg.jp/

*いずれの場合も、ステロイドやβブロッカーというお薬を内服中、不安定な気管支喘息がある、抗癌剤治療中、妊娠中、自己免疫疾患のある方は、アレルゲン免疫療法をおこなえない場合があるので医師にご確認ください。また、花粉が飛んでいる時期に開始することは控えます。

3.手術

 重症の鼻症状のある花粉症の方で、鼻や副鼻腔の形に問題が場合には、手術が適応になることもあります。

 4.抗IgE抗体(ゾレア🄬)

花粉症で起きる最初の反応は花粉を敵として反応するIgE抗体が、マスト細胞の表面に結合することです。ゾレア🄬はIgE抗体とマスト細胞の結合を阻害する分子標的薬で花粉症の反応の根本を抑えることができます。(抗ヒスタミン薬やロイコトリエン拮抗薬などはこの反応の下流を抑える薬です。)これまでは重症の気管支喘息や慢性じんま疹で使われていましたが、今シーズンより重症、最重症の花粉症でも使えるようになりました。

2~4週間に1回の治療で劇的な効果がある一方で薬価が1回で12~18万円程度(体重とIgE抗体量による)と非常に高価ですのでIgE抗体が高く、ほかの治療では無効の場合のみ投与されます。

https://secure.novartis.co.jp/kafun_kyousei/severe_pollinosis/

 

《日常生活で、症状を悪化させないために》

1.花粉が多く飛ぶ時の外出を控える。外出する時は、マスクやめがねを使う。

2.表面がなるべくつるつるした服を着る(毛羽だった服は花粉がつきやすい)

3.帰宅したら、服や髪についた花粉をはたいてから家に入る。

直ぐに、顔を洗い、ガラガラうがいをして鼻をかむ。皮ふはよく保湿する

4.花粉が飛ぶ時期は、窓や戸を閉めておく。

空気清浄機を使う(花粉除去機能つきのものも)。

5.花粉が多く飛ぶ時期は、外に洗濯物を干さない。

6.部屋の掃除をこまめにする。水拭きも有効。

肥満症

《肥満症とは》

体の脂肪が過剰に増えてしまった状態を「肥満」と言います。

BMI (body mass index:肥満指数) 25~35が「肥満」、35以上が「高度肥満」と定義されます。また、体脂肪率が男性で25 %以上、女性で30 %以上で、体脂肪率が高いとされ、これも目安になります。ご自身のBMIを、当てはめて計算してみましょう↓

BMI:体重 (  )kg ÷ 身長(   )m ÷ 身長(  )m=(  )

例)身長170㎝、体重85㎏なら…85÷1.7×1.7=BMI 約29.4 「肥満」

一方で「肥満症」は単に肥満なだけでなく、肥満に関連する健康障害が合併している、あるいは合併が予想される状態で医学的に減量を必要とする状態を言います。

《肥満に関連する健康障害とは》

1.耐糖能障害(2 型糖尿病・耐糖能異常など)
2.脂質異常症
3.高血圧
4.高尿酸血症・痛風
5.冠動脈疾患:心筋梗塞・狭心症
6.脳梗塞:脳血栓症・一過性脳虚血発作(TIA)
7.脂肪肝(非アルコール性脂肪性肝疾患/NAFLD)
8.月経異常,不妊
9.睡眠時無呼吸症候群(SAS)・肥満低換気症候群
10.運動器疾患:変形性関節症(膝,股関節)・変形性脊椎症,手指の変形性関節症
11.肥満関連腎臓病

 

《肥満症でからだ中に障害が起きてしまう理由》

脂肪は単に脂肪として存在するだけではなく脂肪細胞からアディポカインと呼ばれる生理活性物質が分泌されます。この分泌は肥満の程度により制御されています。

善玉のアディポカイン=アディポネクチン :肥満で低下

悪玉のアディポカイン=TNF-α、MCP-1   :肥満で上昇

このアディポカインの分泌異常により脂肪組織の慢性炎症を起こし、全身にさまざまな障害を起こします。内臓脂肪は特にアディポカインの分泌に強く影響するため問題となります。

肥満症のこわいところは、今は体調に問題がなくても体の中でじわじわと病気が進み、高血圧や糖尿病、脂質異常症を経て、ある時突然脳卒中や心臓病を起こすところです。また、がんの原因にもなります。合併症を起こさないために、今から治療(対策)をしていくことが大切です。

 

《メタボリックシンドロームとの違い》

メタボリックシンドロームは内臓脂肪の蓄積に加えて高血糖,高血圧,脂質
異常を生じた状態です。

肥満症は肥満に健康障害が生じた状態です。内臓脂肪の蓄積は診断に必須ではありません。

どちらも内臓脂肪の蓄積が影響している病気であり重なり合う概念です。

《治療について》

肥満の90%以上は単純性肥満(食べ過ぎ、運動不足)で残りはホルモン異常(クッシング症候群、甲状腺機能低下症など)、薬剤による影響などが考えられます。ホルモン異常などがあればこれらの治療を行います。

単純性肥満の場合は食事・運動が基本です。まずは3%の体重減少を目標にしましょう。

 

1.食事

1日にご自身がとって良いカロリー(kcal)を計算してみましょう。

まず、ご自分の適正体重を当てはめて計算してみましょう↓

適正体重(kg) :身長(  )m × 身長(  )m× 22=(  )kg

例)身長が170㎝なら…1.7×1.7×22=約63㎏

→ 肥満症:1日あたり 25 kcal/kg×適正体重 以下を目安に

高度肥満:1日あたり 20~25 kcal/kg×適正体重 以下を目安に

栄養素の配分は糖質 50~60%, たんぱく質 15~20%,脂質20~25%が推奨されています。極端な糖質制限はあまり長期的な差はなく、あまりお勧めできません。たんぱく質が少ないと筋肉が減り、かえって代謝が落ちる場合があります。

具体的には

・ 野菜を多めに、食事の初めにとるようにしましょう。

・ 積極的に食べた方がいいもの(魚、食物繊維が多いもの)

魚、大豆、野菜、きのこ、こんにゃく、海藻、玄米、麦ごはん、雑穀 など

を多めにとりましょう。乳製品、果物、卵は適量を。

・ 塩分は1日6g未満(一度、自宅のはかりで6gをはかってみましょう)

減塩する為の工夫として、香辛料やハーブ、減塩味噌・醤油・ポン酢、

レモンなどを使ってみましょう(スーパーでも減塩調味料を売っています)

・ 動物性脂肪・コレステロールの摂取を減らす。

お肉の脂身、鶏肉の皮、バター、マーガリン、洋菓子、スナック菓子、揚げ

菓子、レバー・臓物、たらこ・いくら等の魚卵 などを減らす

 

2.運動

体重が多い方は適正体重になるよう、速歩や歩行などの有酸素運動を週に5回程度行いましょう。

また、肥満指数(BMI)によって体重を減らすペースが異なります。

BMI 25以上「肥満」の方:3-6か月で、現在の体重から3 %以上の減量

BMI 35以上「高度肥満」の方:現在の体重から5-10 %の減量

を目指しましょう。

3.飲酒量は減らして、たばこは禁煙しましょう。

これらの治療を6カ月以上行っても改善が見られない高度肥満症では胃を小さくする手術なども検討されます。

《最後に》

生活習慣病は、数ヶ月で検査値をよくしておしまい…ではなく、合併症を起こさないためにも年単位でよい状態を保っていくことが大切です。初めから生活習慣の改善をがんばり過ぎると疲れてしまうこともあるので、無理のない範囲で出来ることから始めていきましょう。例えば…運動は週に数日でもかまいません。ひかえた方がよいとされる食べ物も、全く食べてはいけないわけではないので、時々は食べてもかまいません。

タバコも自分だけでやめるのが難しければ、医師に相談してください。コツは、「多少細くても長く続けること」です。病院の次の受診までにうまく出来ないことがあっても、嫌にならずにコツコツ通院を続け、出来ることをやっていきましょう。医師や看護師が相談にのりますので、あなたの今後の生活をよくしていくために、一緒に取り組んでいきましょう。

* 心臓病や糖尿病、腎臓病がある方は食事や運動に制限があることもあるので、

医師にご確認ください。