起立性調節障害について

立ち上がったときのめまい、ふらつき、失神など「貧血」と表現される症状は医学的には起立性調節障害と呼ばれます。今回は起立性調節障害について解説したいと思います。

【症状】
急に姿勢を変えたときなどに起こる、「力が入りにくい、感覚が鈍くなる、めまい、もうろうとする、目の前が暗くなる、首の後ろが痛くなる」などの症状。

【起立性調節障害はどのくらいの患者さんがいるの?】
日本小児心身医学会によると小学生の約5%、中学生の約10%のお子さんが起立性調節障害です。
成人の5~20%で高齢になるほど多くなります。

【どういう病気なの?】
普通の人は立ち上がると
➀交感神経という興奮させる神経が働き
➁副交感神経というからだをリラックスさせる神経が抑えられ
➂足や内臓の血管が細くなり、心臓に戻ってくる血流が増え
血圧が維持できます。
起立性調節障害の患者さんはこの仕組みがおかしくなり「脳貧血」という状態になってしまいます。

【こういう人が危険です】
・仰向けで血圧が高い。
・頸動脈が狭い(50%以上の狭窄)。
・薬を飲んでいる(高血圧、糖尿病、抗うつ薬、向精神薬など)。

・アルコールを飲んでいる。

・貧血や脱水がある。
 

・パーキンソン病、レビー小体型認知症、多系統萎縮症などの変性疾患がある。
・糖尿病、シェーグレン症候群、アミロイドーシスなど末梢神経に障害を起こす病気がある。
・高齢者(血圧の変化を感じにくいため)。

【似た病気】
体位性頻脈症候群(POTS)起立時に血圧は下がらないが、脈が早くなる病気です。若い女性に多く、症状は起立性調節障害と同じで目の前が暗くなったりします。原因不明で血液量の減少、静脈の機能低下、心機能の低下、交感神経の活性化などが推定されます。脱水などを避け、適度な運動をすることが有効です。

食後低血圧食後15分~90分で血圧が下がる病気です。食後に内蔵への血流が増加することが原因と考えられています。

反射性失神:何らかの刺激が原因で血管が拡がり、脈が遅くなることで脳貧血を起こします。刺激としては感情の変化、痛み(注射をしたあとなど)、恐れ、長時間の立位、暑い中にいるなどのほか、排尿、咳、排尿、排便、嚥下などが刺激となります。足をクロスさせるのが有効です。

【診断】
仰向けの状態から立ち上がり(2~5分後に)収縮期血圧20mmHg以上あるいは拡張期血圧10mmHg以上低下する。原因の解明のために診察や採血などを行います。

【治療】
治療の目標は症状を取ることで、血圧を正常にすることではありません。
①原因となる薬の中止
②生活指導 ゆっくり起きる、緊張を避ける、激しい咳をしない、暑い中を歩かない、いきんで排便しない、上体を少し起こして寝る、適度な運動をする、血糖値が上がりやすいものを食べない
③弾性ストッキングや腹帯を使う
④足をクロスして立つ、口をすぼめて息を吸う
⑤飲水(1.5リットル以上)と塩分摂取を増やす。

これらでも改善しなければ薬による治療を行います。交感神経を刺激するミドドリンやドロキシドパを用いますが、副作用の注意が必要で、長期に使った場合の効果などについて十分な報告がありません。

副作用のリスクが少ない漢方薬では苓桂朮甘湯、半夏白朮天麻湯なども有効とされています。

【まとめ】
血圧は自律神経という神経が調節してくれています。しかし、病気のある人、薬を飲んでいる人、脱水やアルコールなどの条件によって調節がうまくいかなくなり脳にいく血流が落ちると「貧血」と言われるような症状を起こします。体位性頻脈症候群、食後低血圧、反射性失神なども大きくみると同じで自律神経の調節がうまくいかないために起きる病気です。いずれも原因の回避、身体処置(足をクロスするなど)、飲水が有効で、薬で治すような病気とは言えません。自粛期間開け~夏場にかけて明らかに増えている症状ですので注意して生活してみてください。

参照:
Up to date
Topic 5103 Ver23.0 Mechanisums, causes, and evaluation of orthostatic hypotension.
Topic 5105 Ver18.0 Treatment of orthostatic and postprandial hypotension.
Topic 5100 Ver12.0 Postural tachycardia syndrome
Topic 1050 Ver32.0 Reflex syncope in adults and adolescents : Clinical presentation and diagnostic evaluation.
Topic 111958 Ver11.0 Reflex syncope in adults and adolescents : Treatment
Topic 1032 Ver30.0 Syncope in adults : Managemet
起立性調節障害 日本小児心身医学会HP

新型コロナウイルスPCR検査について

【PCR検査を開始します】
当院でも唾液によるPCR検査を開始いたします。結果が出るまで約2日程度のお時間を頂戴いたします。鼻腔による検査については医療従事者の感染のリスクが高いため行わない方針です。

【保険診療の場合】
当院は保健所と契約を結びPCR検査を実施することにいたしました。通常の診療と同様に、症状の推移や接触歴等の問診で得られた情報や診察所見、検査所見、併存疾患等の臨床的特徴を総合的に判断したうえで、必要と認められた患者さんについて検査を実施いたします。当院は医療従事者の感染を防ぐため唾液による検査のみ実施するため発症後9日以内の方が対象となります。患者さんには滅菌容器に 1-2mL 程度の唾液を自己採取していただき検査に提出します。非常に高額で、保険診療では全て保険と税負担になることから本当に必要な患者さんのみが対象となる点についてご理解ください。

【自費検査の場合】
主に海外渡航や職場への提出などのために必要な方を対象に行います。
海外渡航を目的とされる方については外務省のホームページをよくご確認いただいたうえで当院にご相談ください。
検体採取方法の指定があるか、渡航時期に結果が間に合うか、などをご相談させていただいたうえで実施の判断をさせていただきたいと思います。
費用は保険外診療で33000円(診断書料金込)とさせていただきます。

壊死性リンパ節炎について

コロナウイルス感染症が流行していた2020年5月には発熱、リンパ節の腫れで来院された患者さんが数名いらっしゃいました。
生検をしていないので診断は確定できませんが、菊池病と考えられ、どなたも自然に改善しています。
「コロナウイルスが流行していても普通の病気がお休みしているわけではない」という良い教訓でした。
今回、大学病院勤務時代にカンファレンス用に作った資料を公開いたします。参考になさってください。

菊池病

別名 菊池-藤本病、組織球性壊死性リンパ節炎、亜急性壊死性リンパ節炎
概要 1972年に初めて報告され、これまで733例の報告がある原因不明の良性リンパ節炎。
好発年齢 20歳~35歳 (実際には広い年代に見られる)
性別 男:女=1:2 (12歳以下では男児に多い)

原因
不明だが以下が考えられる
・感染?(EBV、HHV6、HHV7、HHV8、HSV、HIV、HTLV-1、Parvovirus B19、Yersinia enterocolitica、toxoplasma)
・アジアからの報告が多く、ヨーロッパからはまれ。⇒HLAハプロタイプとの関連(DPA1*01、DPB1*0202?)
・自己免疫機序 全身性エリテマトーデスとの関連(アジア28%、ヨーロッパ9%)

症状
・急性~亜急性に出現する局所特に頚部リンパ節腫大、発熱、上気道症状、嚥下痛など。
・非典型的な症状として悪寒、盗汗、関節痛、体重減少。ときに肝脾腫。
・腫大リンパ節は後頚部が多く(90%)、痛みを伴う。中間サイズ(0.5-4.0㎝)が多い。
・全身リンパ節腫大に至る症例は1~22%。
・リンパ節外病変は皮膚が最多(30-40%)

(菊池病 69 例の臨床的検討 都立駒込病院感染症科:感染症学雑誌 第83巻 第 4 号)

検査データ
・(ときに血球貪食が関連する)軽度の血球減少(白血球19~43%、貧血23%)。
・赤沈亢進(40-79%)、LDH上昇(53%)、ALT上昇(23%)。末梢血異型リンパ球(25%)

診断 
リンパ節生検。
針生検では偽陽性37.5%、偽陰性50%を認め正診率56%。

鑑別
感染性リンパ節炎(結核、トキソプラズマ、Bartonella henselae、HIV、EBV)、結合織異常(SLEなど)、リンパ増殖性疾患など。

鑑別診断(臨床所見および画像所見)

治療 自然軽快(64%)、ステロイド使用(10‐40%程度)、クロロキン

予後
おおむね良好だが0.5~2.1%で死亡 (心筋浸潤、脳出血、全身性エリテマトーデス、血球貪食症候群)。再発4~15%。全身性エリテマトーデス、混合性結合性組織病、シェーグレン症候群などとの合併あり。

まとめ
壊死性リンパ節炎は原因不明の良性リンパ節炎です。
アジア人に多く膠原病との関連が言われていることが特徴的です。
治療なしでも自然に良くなるケースが多いものの、一部重症化し、再発も比較的多いので注意が必要な病気です。
若い女性で熱、リンパ節の腫れ、血球減少などをみたら疑うべき病気です。