HPVワクチン(その2)

コロナ禍の1年の中で、HPVワクチンについても3つの大きなニュースがありました。前回のブログ以降のニュースをまとめました。 ①定期接種の個別通知の再開 HPVワクチンは定期接種で小学校6年生~高校1年生の女性は公費負担で無料で接種することができますが、接種後に重篤な副反応が疑われた方がいたことから積極的勧奨(接種時期の案内や個別の推奨)を中止しています。しかし、2020年10月9日に厚生労働省はHPVワクチンの定期接種対象者に個別通知を出すよう求める事務連絡を都道府県に発出しました。これにより「積極的勧奨の中止」自体は継続していますが、接種対象者に連絡されるようになりました。 ②男性へのHPVワクチン接種が可能に HPVは子宮頚がん以外にも肛門がんや陰茎がん、中咽頭がんなどの原因になります。2020年12月に添付文書の改訂が行われ9歳以上の男性にも4価ワクチン(ガーダシル®)を接種できるようになりました。HPVを女性に感染させないためにも男性への接種は重要ですが、現時点では任意接種となっています。 ③9価ワクチン発売 2021年2月に9価HPVワクチン(シルガード9🄬)が発売されました。ガーダシル🄬が対応している4つの型(HPV6、11、16、18)に加え、5つの型(HPV31、33、45、52、58)に対応できるため子宮頚がんの原因となるHPV型の88.2%をカバーできるようになりました。ちなみに2価ワクチン(HPV16、18)のカバー率は65.4%です。 ここでシルガード9🄬について簡単に記載します。 ①予防効果 国際共同試験において4価ワクチンに追加されたHPV31、33、45、52、58型に関連した腫瘍を96.7%予防。ガーダシル🄬でカバーされていたHPV6/11/16/18型の抗体価はガーダシル🄬群と比較して、劣りませんでした。 ②安全性 接種後5日間の注射部位の副反応は90.7%、接種後15日間の全身性の副反応は29.6%でおおむねガーダシル🄬と差はありません。 日本人では、接種後5日間の注射部位の副反応は127例中104例(81.9%)、接種後15日間の全身性の副反応は127例中15例(11.8%)でした。 薬剤との関連性が否定されない死亡例は認められていません。 ③安全対策 過去に重篤な副反応が疑われた経緯から全例登録が義務づけられています。具体的には接種医、被接種者がともにワクチンQダイアリーという全例登録システムに登録し、副反応を確認していきます。 ④接種方法 初回、2か月後、6か月後の合計3回筋肉注射で投与します。 サーバリックス🄬、ガーダシル🄬との途中での変更はできません。 ⑤接種費用 残念ながら現時点では任意接種であり自己負担となります。また、ワクチンが極めて高価です。当院では1回27,000円とさせていただきます。 以下のページも大変わかりやすいのでご参照ください。 知って欲しいHPVと子宮頚がん予防 最新学術情報 HPVワクチン 変わり始めた風向き… 9価の「シルガード9」申請から5年半越しの発売