HPVワクチンについて

(※この記事は2020年6月19日に更新しました) 私たちは新型コロナウイルス感染症を経験しました。これまで公衆衛生に対する関心がこれほどまで高まったことはなかったのではないでしょうか? ウイルスと人類の共生の歴史の中でワクチンの開発によって多くの命が救われてきました。 しかし、HPV(ヒトパピローマウイルス)は子宮頚がんの原因として知られるもののいまだに克服されていません。 HPV感染により年間1万人が子宮頚がんに罹患し約2800人が死亡しています。 (2020年6月19日現在のコロナウイルス感染による日本人の死亡者数は935人です。) HPVワクチンは小学6年生~高校1年生相当の女子における定期接種(市区町村が主体となって実施し、費用は無料)ですが、「積極的な接種勧奨の差し控え」が行われており、実際に接種しているのは1%未満となっています。 当院としては積極的にお勧めする、というスタンスではありませんが、この機会にもう一度ご家族で議論を行ってみてはどうかと思います。 【ポイント】 ●子宮頸がんのほぼすべてが高リスクHPVの感染で起こる。 ●子宮頚がんは年間約1万人が罹患し、約 2,900 人が死亡している。 ●20〜40 歳代前半で特に発症率が増え、若い女性が死亡したり出産できなくなっている。 ●子宮がん検診だけでは感度が低く(50~70%)見逃される可能性がある。 ●HPVは性的接触で感染し、コンドームなどを用いても完全には遮断できない。 ●HPVの感染は性交渉のある女性の50~80%で起こる。 ●HPV感染は多くは一過性、無症状で治るが、一部(1%以下)で感染が持続し子宮頚がんを発症する。 ●HPVワクチンは定期接種(公費負担で無料)だが積極的勧奨(接種時期の案内や個別の推奨)を中止している。 ●HPVワクチンは自費の場合15,000~16,000円/回と高額で3回では45,000円以上!! ●HPVワクチンの接種は3回の筋肉注射で行い、少なくとも10年以上の効果が期待できる。 ●感染が成立したあとでワクチンを打っても効果はない。 ●国内で使えるワクチンは2価、4価で9価ワクチンは使えない。 ●ワクチンにより60~70%の子宮頚がんの原因となるHPV16/18をほぼ100%予防できる。 ●多くの人がワクチンを受けることで集団免疫効果がある。(ウイルス感染者が減少し、ワクチンを受けていない人も感染する危険が減る。) ●ワクチンの合併症として注射部位の一時的な痛みは 9 割以上、一過性の発赤や腫れなどの局所症状は約 8 割の方にみられる。 ●HPV ワクチン接種後に生じた多様な症状と HPV ワクチンとの因果関係を示唆するエビデンスは報告されておらず、機能性身体症状と考えられている。 ●HPV ワクチン接種後に多様な症状が現れた人たちへの治療体制が整えられた。 参考 日本産婦人科学会「子宮頸がんと HPV ワクチンに関する最新の知識と正しい理解のために」 厚生労働省ホームページ 「ヒトパピローマウイルス感染症(HPVワクチン)」