多血症(血色素が多い)

健康診断などで血色素(ヘモグロビン(Hb))、ヘマトクリットが高いことを指摘されご心配されている方が多いことと思います。ここでは多血症についての考え方、診断について解説したいと思います。

《赤血球の検査の見方について》
まず血液検査の中で赤血球の検査についてお示しします。赤血球数、ヘモグロビン(Hb)、ヘマトクリット(Ht)は以下の関係になります。

赤血球数:血液1マイクロリットルあたりの赤血球の数。
Hb(血色素):全血液中のHb(赤血球の中にある酸素を運ぶたんぱく質)の量を計ったもの。低くなると貧血。
Ht:全血液中の赤血球の容積率。
血液を遠心分離すると血液は下のように分かれ、重い赤血球は下の方に集まります。Htは図の赤矢印÷黒矢印、つまり全血液中の赤血球の割合ということになります。

《多血症の基準とは?》
多血症の診断基準は以下のようになります。
男性 ヘモグロビン(Hb) > 16.5 g/dl、ヘマトクリット(Ht) > 49 %
女性 ヘモグロビン (Hb)> 16.0 g/dl、ヘマトクリット (Ht)> 48 %

ヘモグロビン、ヘマトクリットのどちらか一方が越えていても多血と診断されます。赤血球数は基準には含まれません。
ちなみに2020年度の人間ドック学会の基準では
男性ヘモグロビン 正常:13.1~16.3 軽度異常:16.4-18.0 要医療:18.1以上
女性ヘモグロビン 正常:12.1~14.5 軽度異常:14.6-16.0 要医療:16.1以上
と男性において軽度異常の中に多血症が含まれてしまう、という矛盾があり注意が必要です。

《まず相対的な多血を除外しましょう》
カルピス🄬をご自宅で作るときに水が少なければ濃い味になります。
これと同じで脱水状態で採血をすると血漿成分が少なくなり血液が濃縮し多血になります。
相対的な多血とはこの状態(図:中)です。
よくあるのは嘔吐や下痢をしたあとの採血ですが、健診のとき前日の夜からまったく水を飲まずに採血すると同様の結果になることがあります。喫煙やいわゆるストレス多血症でも同じことが起こります。

左:正常 中:相対的多血 右:真の多血

来院される方の大多数はこの相対的な多血の状態と考えられます。まず水分補給をしっかりと行い、喫煙はやめるようにして検査してみましょう。

 

《真の多血症は2つにわけて考えます》
真の多血症は図右のように本当にヘマトクリットが増えた状態です。実際に赤血球が増えています。原因を2つにわけて考えます。

1.造血機能以外に原因があって多血になっている場合
➀低酸素が原因になっている場合
スポーツ選手が高地トレーニングをすると、身体は酸素を運ぶヘモグロビンが増えるように順応します。同じように心臓や肺に病気がある場合など身体の中で低酸素の状態がおきるとヘモグロビンが増えてしまいます。
また、タバコを吸う方はタバコの燃焼によって生じた一酸化炭素がヘモグロビンと強固に結合してしまい、実際に働けるヘモグロビンが減少し低酸素を起こす場合があります。

最近よく目にするのは睡眠時無呼吸症候群による多血の患者さんです。夜に呼吸が止まり低酸素の状態となることで多血症になってしまいます。

参考:睡眠時無呼吸症候群(当院Blog)

➁エリスロポエチンを過剰につくってしまう場合
赤血球を作ることを促す物質(サイトカイン)であるエリスロポエチンは腎臓で作られます。
腎臓に行く動脈で動脈硬化が起こることで腎臓が低酸素になるとエリスロポエチンが過剰に作られ多血になることがあります。

また、エリスロポエチンを作る腫瘍がある場合にも多血症になります。肝細胞がん、腎がん、血管芽腫、褐色細胞腫、子宮筋腫などが代表的な腫瘍です。

2.造血機能そのものがおかしくなっている場合(真性赤血球増加症などの骨髄増殖性腫瘍)
赤血球のもとになる造血幹細胞に、主にJAK2V617F(95%以上)という異常が生じることで身体の制御を超えて赤血球が増えてしまう病気です。多血症と調べるとまずこの病気が出てくると思いますが、1年に10万人あたり2人程度と非常にまれな病気です。この病気の場合、ただ赤血球が多いだけでなく、血栓を起こしやすいため抗血小板薬の内服、しゃ血(血を抜く)治療などを行います。
参照:骨髄増殖性腫瘍患者・家族会「真性赤血球増加症Q&A」

《多血症ではなにが問題でしょうか?》
多血症では過剰な赤血球の増加により血液がドロドロになることで脳梗塞、心筋梗塞などの合併症が起こる場合があります。
また、真の多血症を起こす原因の中には心臓や肺の病気、睡眠時無呼吸症候群、がんなどが含まれます。これらは放置することで命に関わる場合もあります。

《まとめ》
多血症はヘモグロビン、ヘマトクリットが増加する状態です。
脱水によって起こる「相対的多血症」と赤血球が本当に増えている「真の多血症」があります。
真の多血症には何らかの原因があり多血となる場合、赤血球自体が腫瘍になる真性多血症があります。
重要な病気が隠れている場合もあり放置せず血液内科に受診することをお勧めします。

参考
up to date :Diagnostic approach to the patient with polycythemia

投稿者:

kwathema

さいたま市見沼区島町の内科・血液内科のクリニック ハレノテラスすこやか内科クリニックの院長です。東大宮駅から徒歩13分のショッピングモール内で内科のクリニックを開院しています。