糖尿病の患者さんはがん検診をうけましょう
私が専門とする血液内科では治療成績の向上に伴い、治療後に生じる悪性腫瘍への対応が課題となっています。例えば悪性リンパ腫のひとつであるホジキンリンパ腫は、今や80%の患者が治癒するため、治療(放射線+抗がん剤)によって増加するがんのリスクに対して治療を縮小すること、検診を受けていただくこと、が課題になっています。同じく造血幹細胞移植(同種移植)を受けた患者さんは固形がんの発症リスクが2~3倍であることが知られており、移植前からがん検診を受けるよう患者さんにお話ししています。 ところが、糖尿病と言えば血管系の合併症(脳梗塞、心筋梗塞、腎不全)が命に関わる、という意識が強く、私も含めて発がんについてあまり意識されていなかったように思います。しかし、「糖尿病の死因に関する委員会報告」によると現在の死因第 1 位は悪性新生物( 38.3 %)、第 2 位は感染症( 17.0 %)、第 3位は血管障害(慢性腎不全,虚血性心疾患,脳血管障害)( 14.9 %)という結果でした。すなわち高血圧や高脂血症に対する薬物療法が進歩し、血管障害が減少している一方で(減少したからか)、悪性腫瘍でお亡くなりになる方の割合が増え続けているのが現状です。「糖尿病と癌に関する委員会報告」によると男性1.27倍、女性1.21倍と発がんリスクが高いことが報告されており、スウェーデン、米国の観察研究によると血糖のコントロールの良し悪しに関わらず発がんのリスクが高いことが示されています。 以上のことから厚生労働省では、胃・子宮頚部・乳房・肺・大腸についてのがん検診を推奨しています。糖尿病は全身病であり積極的に健康診断を受診するよう心掛けていただきたいと思います。 (詳細 http://dmic.ncgm.go.jp/general/about-dm/070/020/04.html)