HPVワクチン最新の話題

令和5年度より9価ワクチン(シルガード9)の定期接種が始まりました。前回までのブログと重複しますが、改めて解説します。
【HPVとは】
ヒトパピローマウイルスのことで子宮頚がんのほか肛門がん、膣がんなどのがんや、尖圭コンジローマなどの病気の発生に関わっています。子宮頚がんはほぼすべてが高リスクHPVの感染によって生じます。
【子宮頚がんの増加

子宮頸がんは年間約1万人が罹患し、約 3,000 人が死亡しており、2000年以降増加しています。
20〜40 歳代前半で特に発症率が増えており、若い女性が死亡したり出産できなくなっています。
子宮頚癌罹患率

がん情報サービス

【HPVの感染について】
HPVは性的接触で感染します。コンドームなどを用いても完全には遮断できず、性交渉のある女性の50~80%で起こります。HPVの感染自体は多くは一過性で無症状で治る(90%以上)ものの、一部で感染が持続し子宮頚がんを発症します。
【ワクチン接種の意義】
子宮がん検診は大変重要ですが感度が低く(50~70%)見逃される可能性があります。
日本での研究によると2価・4価ワクチンに含まれるHPV16、HPV18に加え5つの型(HPV31、33、45、52、58)に対応できるため子宮頚がんの原因となるHPV型の約9割を予防できます。

【HPVワクチンの接種時期について】
HPVワクチンは感染予防効果がありますが、いったん長期感染してしまったHPVを排除することはできません。また、9 価 HPV ワクチンについては15歳になるまでに2 回接種を受けた際の抗体陽性率と抗体価の上昇が、3 回接種を受けた場合と比べて劣らないため15歳未満では合計 2 回の接種も選択でき、被接種者の負担も軽くなりました。接種を検討される場合は15歳未満で接種を開始することをお勧めしたいと思います。
ただし、性交を経験された女性であってもHPVに感染したことがない女性では、ワクチンの感染予防効果が確認されています。特にキャッチアップ接種の対象(国の積極的勧奨が差し控えられていた1997年4月2日~2007年4月1日生まれの女性)の方は令和7(2025)年3月までの3年間に接種を終えられるよう接種をご検討ください。

【9価ワクチンの安全性について】
接種後5日間の注射部位の副反応は90.7%、接種後15日間の全身性の副反応は29.6%でおおむねガーダシル🄬と差はありません。 日本人では、接種後5日間の注射部位の副反応は127例中104例(81.9%)、接種後15日間の全身性の副反応は127例中15例(11.8%)でした。 薬剤との関連性が否定されない死亡例は認められていません。9-15 歳女子を対象にした国内試験においては、接種後 5 日以内の注射部位の副反応が 95.0%(100 症例中 95 症例)、特に疼痛は93.0%(100 症例中 93 症例)に認められました。
また、9価ワクチンの定期接種の導入前には2022年3月まで接種者全員の全例登録による強化安全監視活動が行われています。当院も約120例の登録を行いましたが重篤な副反応の報告はありませんでした。

【交互接種(接種途中から9価ワクチンに変更すること)について】
1 回目または 1 回目と 2 回目を 2 価または 4 価の HPV ワクチンを接種しており、途中で 9 価 HPV ワクチンに切り替える交互接種について、海外からの報告で安全性の点では問題ないことが示されており変更することは可能です。ただし、長期的なエビデンスを欠くため有効性のエビデンスがある同一ワクチンで終了することが推奨されています。

さいたま市の場合
さいたま市では2価、4価、9価のワクチンを選択できます。9価ワクチンについては小学校6年生~15歳未満では2回、15歳~高校1年生相当では3回の接種を定期接種として認めています。このため中学3年生では2回接種と3回接種が混在する形になります。

キャッチアップ接種についてもさいたま市HPを参照ください。なお、9価ワクチンを自費で接種された方については残念ながら償還払いの対象とはならないようです(https://www.city.saitama.jp/008/016/001/005/p087985.html)。

接種について不安を感じる方もいらっしゃると思いますが、予防できる疾患について積極的に対策をご検討いただけますと幸いです。

参照:日本産科婦人科学会「子宮頚がんとHPVワクチンの正しい理解のために