内科学会セルフトレーニング問題

毎年恒例の内科学会のセルフトレーニング問題を今年も受験しました。内科領域の専門以外の最新治療について学ぶことができる重要な機会です。毎年難易度が高く苦しめられますが今年も数問間違えてしまいました。改めて勉強しなおし明日からの診療に活かしたいと思います。

高齢者におすすめするワクチン 破傷風

【破傷風について】

破傷風は世界中の土の中にみられる破傷風菌が外傷や火傷などをきっかけに感染して発症する病気です。破傷風が感染すると、菌が生み出す毒素により筋肉が動かなくなり、口が開かない、筋肉が硬張する、呼吸ができない、などの症状が生じ最終的には死に至ることもあります(致命率20~50%)。

【破傷風の抗体について】

小児の4種混合ワクチンにも含まれているため、小児では抗体を十分に持っていますが、高齢者では抗体が少なくなり、感染のリスクが上がります。(破傷風抗体保有)

実際に2016年の報告では発症者120人のうち78人(65.0%)が70歳以上でした。

【破傷風予防接種のおすすめ】

土いじりをする高齢者は破傷風を発症する可能性があり、もし発症した場合は命に関わります。ガーデニングや家庭菜園などを趣味で行っている高齢者は注意が必要な疾患であり任意での接種をお勧めいたします。

当院では3,700円で実施しております。

肺炎球菌ワクチンについて

【肺炎球菌感染の重要性について】

肺炎は死因の第 3 位です。肺炎を起こす細菌は多数ありますが、そのなかで肺炎球菌はおよそ2割くらいと言われています。

肺炎球菌性肺炎は、敗血症(菌が血液中にまわり臓器障害を起こす状態)、髄膜炎(脳のまわりに菌が侵入する)などの侵襲性肺炎球菌感染症を合併し重症化しやすいことが知られています。また、インフルエンザと合併しやすく、インフルエンザ後の肺炎の原因として重要な病気と言えます。

【予防接種の効果について】2014年10月から65歳以上の成人を対象に開始された肺炎球菌の定期接種では高齢者介護施設入所者で肺炎に対する予防効果(肺炎球菌性肺炎:63.8%, 全ての肺炎:44.8%)が認められました。また、75歳以上で予防接種を受けた方は、接種後 2 年間の入院率が 41.5%まで減少したことが報告されています。さらに、ワクチン接種 1 年間の 75 歳以上の高齢者では肺炎医療費が減少しました。

【課題】23価肺炎球菌ワクチンでカバーされない肺炎球菌による感染が増加傾向であることが現在の課題として残っていますが、腎臓、心臓、肺などに病気のある高齢者にはぜひお勧めしたい予防接種です。

当院では定期予防接種のほか、5年経過後の追加接種も実施しております。費用は8000円です。

参考;

日本感染症学会「65 歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方
(第2版 2017-10-23)」

国立感染症研究所「23 価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン(肺炎球菌ワクチン)ファクトシート」

地域医療を考える会

10月30日に地域の先生方に参加いただき、「地域医療を考える会~血液内科~」を開催いたしました。

現在、高齢化は三大都市圏で急速に進行しています。さいたま市の高齢化は緩やかですが、埼玉県全体では年2.3%と全国最速で高齢化が進行しています。現在は患者の受け入れ先となっている東京都も同じく高齢化が進行しており、埼玉県に医療難民が発生する恐れがあります。

これまでは勤務医の先生方が労働時間を超過することで、医療環境が維持されていましたが、2024年に勤務医の残業時間の上限が決められ、約4割の医師は業務の削減を求められることになりました。2019年7月1日には「医師、看護師等の宿日直許可基準について」および「医師の自己研鑽に係る労働時間に関する考え方について」を厚生労働省が発表し、睡眠のとれない当直、労働と兼務あるいは上司からの指示に基づく自己研鑽は労働時間に含まれることが明示されたことから実質的な労働時間の短縮は必須になっています。

以上の経緯に加え、埼玉県は人口10万人あたりの血液内科専門医数が1.73人(全国平均3.24人)と血液内科医が不足しています(埼玉県の血液内科)。また、血液内科では血液疾患の罹患率の増加、治療法の進歩による治療適応の拡大、予後の改善により外来で診察が必要な患者さんはますます増加しています。

これに対して当院ではかかりつけ医の先生方と情報交換することで血液疾患を地元で拝見できる環境づくりを行おうと考えております。当院で拝見したうえで本当に必要な患者さんのみ大学病院や基幹病院にご紹介することで患者さん、勤務医の負担を軽減してまいります。また、大学病院、基幹病院で治療を終えた患者さんの経過観察を積極的に行うことで医療資源の適切な分配に貢献できるように提案しております。今回の会では多くの先生方に賛同頂き、水平方向での地域連携を進める大変有意義な会となりました。

JMECCに参加しました

10月26日に内科救急の研修であるJMECCにインストラクターとして参加してきました。急変時、最初の10分の救急処置であるICLSに加えて、重症感のある患者さんへの初期対応を学ぶ講習であり、主に内科を志す研修医の先生方12人が参加されました。私はインストラクターとして指導にあたり、若い先生方の積極的な取り組みに大変刺激を受けるとともに自身のスキルを振り返る機会となりました。

患者さんを急変させない、さらに急変したときには適切な処置を行えるよう今後も定期的に参加していきたいと思いました。

参考:

https://www.facebook.com/ikashika.cpe/   (院長:最後列右から4番目)

インフルエンザについて当院の考え方(改定:2019.11.8)

インフルエンザのシーズンに入ってきました。当院でも予防接種を実施しておりますが、予防接種と感染予防策をもってしても感染は起きます。

当院では他院と同様、インフルエンザの疑われる患者さんについては迅速検査キットによる検査を実施のうえ投薬を行います。体調の悪い患者さんを出来るだけお待たせしないよう、また費用負担ができるだけ少なくなるよう対策を検討しています。

なお、下記は当院の考え方です。

院内感染の予防について:インフルエンザにかかった患者さんのうち症状が出現する割合は66.9%と報告されています。つまり、インフルエンザに罹患していても発熱していない患者さんが2~3割いることが予想されます。また、感染後発症までの潜伏期間は2日程度あります。このため発熱で来院された患者さんのみを隔離する、という方法では院内感染は防げないことが示唆されます。当院では院内に入る方全員に無料でマスクを配布し、手指消毒に協力していただくようにしております。ご協力をお願いいたします。なお、当然ながらスタッフ全員にワクチンを接種し、可能な限りスタッフの家族にもインフルエンザワクチンを接種してもらっています。

 

ゾフルーザについて:これまでの治療薬と異なりインフルエンザPAたんぱく質に作用する薬剤です。1回の内服で治療が完結し投与直後からウイルス量が抑制される大変素晴らしい薬剤ではありますが、国立感染症研究所のサーベイランスによると2018~19年にA(H1N1)pdm09に1.5%、A(H3N2)で9.4%の耐性を認めています。第Ⅲ相試験でもA(H3N2)ウイルスについて12歳未満の小児において25.7%、12~64歳で10.9%耐性ウイルスの検出がありました。耐性ウイルスは増殖能が落ちているから問題ない、との意見もありますが、実際に耐性ウイルスのヒトからヒトへの感染の報告もあります。以上のことから当院では安全性を考慮しゾフルーザは特別な理由がない限り投与はしない方針です。

妊婦さん;ご家族も含めて予防接種をぜひ受けるようにしてください。妊娠中でも構いません。国立成育医療研究センターによれば妊娠中であってもオセルタミビル(タミフル)の催奇形性はほぼ否定されています。一方でインフルエンザの罹患による合併症、妊婦の死亡、児の先天異常などを考慮すると早期の治療が有用とされています。疑われる際には早めの受診をお願いします。

合併症(慢性肺疾患、心臓疾患、血液疾患、糖尿病など)がある患者さん、65歳以上の高齢者:合併症のリスクが高いと言われています。ご家族も含めて予防接種をぜひ受けてください。インフルエンザ迅速検査が陰性であっても突然発症の高熱、上気道症状、インフルエンザの患者との接触などがあった場合には臨床的な判断によりオセルタミビル(タミフル)、イナビルなどの投与を検討させていただきます。ただし、インフルエンザ以外には上記薬剤は無効です。

予防投与:合併症のある患者さん、妊婦さんなどの高リスクの患者さんには予防投与をお勧めします。ただし、保険診療ではなく全額自費となります。診察料もあわせてオセルタミビル(タミフル)4690円、イナビル10歳未満5570円、10歳以上7750円です。

ザ・鹿肉バーガー

東大宮駅で毎日気になっていたベッカーズの鹿肉バーガーを食べてみました。柔らかく余計な油も少なくおいしかったです。鹿肉は鉄分も豊富で貧血の方にも良いようです。

そこで終わればよいのですが、つい悪い癖が出ていろいろ調べてしまいました。現在日本の山間部では猪、鹿などが増加し、田畑を荒らすなどの被害が出ています。有害動物として駆除していますが、実際に食べられているものは10%もないそうです。(駆除といってもライフルで打つケースはずいぶんと減って罠をしかけることが増えているようです。)

 

 

しかし、野生動物を食肉として流通させることは流通、安全などの面でずいぶんとハードルが高く立ち遅れていました。なぜなら野生動物ですのでE型肝炎、下痢原性大腸菌などの感染の可能性があり、適切な処理をしなくてはならない一方で捕獲する方が精肉処理、流通までを担当するためなかなか食卓に上らなかったようです。平成30年5月18日に農林水産省は、国産ジビエ認証制度を立ち上げており、今後はジビエの流通の後押しをしてくださることと思います。

いずれ、鉄欠乏性貧血の患者さんに「鹿を食べてください」という時代が来るかもしれません。ただし、感染症についても一緒に増えてしまっては大変です。くれぐれも生食しないようご注意を。

参考

https://www.jefb.co.jp/beckers/topics/archives/64

http://www.maff.go.jp/j/nousin/gibier/ninsyou.html

防災訓練

今日は7時50分からハレノテラスの防災訓練でした。避難訓練と初期消火の方法について実際に訓練を行いました。当院からは3人が参加しました。災害はいつ起きるとも限らないため日ごろの訓練が重要と思いました。

なお、当院ではAED、バックバルブマスクなど初期救命器具を完備し、院長はJMECCインストラクターとして初期救命の指導に当たっています。ハレノテラス内やご近所での初期救命については当院も積極的に活動していきたいと考えています。

勉強になりました (血液型の亜型)

今日の診療中にお問い合わせの電話をいただきました。

「母が40歳頃までA型と思っていたのですが、A1Bm型の血液型でした。自分も調べた方が良いでしょうか?すこやか内科で調べられますか?」

というご相談でした。恥ずかしながら私は何のことか理解できませんでした。

調べてみたところB型赤血球のB型抗原を作る指令が増幅されず、B型の抗原が極端に少なくなる遺伝的な体質のことでした。

下の図で示したようにO型の赤血球にはA型、B型の抗原はありません。A型にはA抗原、B型にはB抗原、AB型にはA抗原とB抗原がついています。

A1Bm型では本当はAB型なのにB型の抗原が少なく検出されないためA型と間違われてしまうことも多いらしく、最悪の場合間違った輸血をされてしまい、致死的な合併症を生じる可能性があります。

当院では調べられない内容でした。

O型

 A抗原B抗原(-)。

A型  A抗原(++)

B型   B抗原(++)

AB型  A抗原(++)、B抗原(++)

A1Bm型  A抗原(++)、B抗原(+)

 

日赤血液センターにお伺いしたところ大病院からの依頼、あるいは献血などで調べているとのことでしたのでそのようにお伝えしました。

血液内科15年目で、新たな勉強の機会をいただけたことに感謝です。お問合せいただきありがたかったです。

親切に教えていただいた日赤血液センターの方、ありがとうございました。

糖尿病の患者さんはがん検診をうけましょう

私が専門とする血液内科では治療成績の向上に伴い、治療後に生じる悪性腫瘍への対応が課題となっています。例えば悪性リンパ腫のひとつであるホジキンリンパ腫は、今や80%の患者が治癒するため、治療(放射線+抗がん剤)によって増加するがんのリスクに対して治療を縮小すること、検診を受けていただくこと、が課題になっています。同じく造血幹細胞移植(同種移植)を受けた患者さんは固形がんの発症リスクが2~3倍であることが知られており、移植前からがん検診を受けるよう患者さんにお話ししています。

ところが、糖尿病と言えば血管系の合併症(脳梗塞、心筋梗塞、腎不全)が命に関わる、という意識が強く、私も含めて発がんについてあまり意識されていなかったように思います。しかし、「糖尿病の死因に関する委員会報告」によると現在の死因第 1 位は悪性新生物( 38.3 %)、第 2 位は感染症( 17.0 %)、第 3位は血管障害(慢性腎不全,虚血性心疾患,脳血管障害)( 14.9 %)という結果でした。すなわち高血圧や高脂血症に対する薬物療法が進歩し、血管障害が減少している一方で(減少したからか)、悪性腫瘍でお亡くなりになる方の割合が増え続けているのが現状です。「糖尿病と癌に関する委員会報告」によると男性1.27倍、女性1.21倍と発がんリスクが高いことが報告されており、スウェーデン、米国の観察研究によると血糖のコントロールの良し悪しに関わらず発がんのリスクが高いことが示されています。

以上のことから厚生労働省では、胃・子宮頚部・乳房・肺・大腸についてのがん検診を推奨しています。糖尿病は全身病であり積極的に健康診断を受診するよう心掛けていただきたいと思います。

(詳細 http://dmic.ncgm.go.jp/general/about-dm/070/020/04.html)