糖尿病
《2型糖尿病とは》 私たちの体では、すい臓から分泌されるインスリンというホルモンにより血液中の糖分がからだに取り込まれる仕組みになっています。ところが、2型糖尿病の方では、インスリン分泌が悪くなったりインスリンは出ていても働きにくくなったりすることで、慢性的に高血糖になってしまいます。 原因として、遺伝(体質)、過食や運動不足、肥満、ストレス、加齢などがあります。 《血糖値が高いと 何が問題なのですか?》 血糖値が異常に高くなると、のどが乾く、尿の回数が増える、体重が減る、疲れやすいなどの症状が出ます。 しかし、初期のうちは無症状のことが多く、医師から「生活を見直しましょう。お薬を飲みましょう。」と言われても、調子が悪いわけではないのでぴんとこない方もいらっしゃるかもしれません。しかし、糖尿病を治療しないで放置すると、恐ろしい合併症が起こります。 1.糖尿病の3大合併症 ①網膜症…徐々に進行すると見えにくくなり、最悪失明に至ります。糖尿病の患者さんの20%くらいの患者さんに失明の危機があります。 ②腎障害…尿にたんぱくが出たりむくんだり、貧血や高血圧になったりします。血液透析になる患者さんの一番多い原因は、糖尿病です。 ③神経障害…手足のしびれ、感覚の低下 2.心筋梗塞、脳梗塞、足の血管がもろくなることによる足の潰瘍、感染症にかかりやすくなる、脂質異常症、高血圧、がん(特に大腸がん)など これ以外にも多くの合併症が知られています。 この様に全身に影響が出てから糖尿病の治療を始めても、悪くなってしまった眼や腎臓、神経などの病気が改善することはほとんどありません。こうした糖尿病による怖い合併症を防ぐためにも、症状がなくても医師と一緒に治療に取り組んでいきましょう。 《検査値について》 糖尿病の状態を定期的に確認するために、採血や検尿を行います。 血糖値:その時の血液中の糖分を測定します。正常は126未満です。 HbA1c:過去1~2ヶ月の血糖値の平均を表します。体温と同じ、と覚えましょう。つまり、6.5%(6度5分)であれば正常、7%(7度)は微熱、8%(8度)は高熱、9%(9度)以上となったら重症です。もし、あなたが8度のお熱が出たら病院に行きますよね? 1.5AG:一日の中の血糖値の変動が多ければ低下する数値です。平均の数値が落ち着いていても食後に高血糖になっている場合は合併症が進行しやすい、と言われており安定している患者さんの血糖変動を見るのに有効です。 尿:たんぱく尿が常に出ているようになったら腎臓への障害が進行した状態です。アルブミン尿を見ることで早期の腎症を見つけていきます。 《治療について》 まず食事・運動による血糖値の改善が最初の治療になります。それでも改善しない場合に、お薬による治療になります。原因が他の病気にある場合は、そちらの治療も行います。血糖値やHbA1cをどこまで下げればよいかは、患者さんの状態によって異なりますので、医師にご確認ください。 1.体重管理 肥満の状態では血糖をからだに吸収させるインスリンの作用が鈍ります。これはぎゅうぎゅう詰めの押し入れに荷物を入れるのが難しいのと同じです。体重を落とし、適度な運動をすることで押し入れに余裕を持たせてあげましょう。 まずは毎日の体重測定が重要です。ご自身の健康管理の第一歩として同じ時間に体重をはかるようにしましょう。 BMI 25以上「肥満」の方:3-6か月で、現在の体重から3 %以上の減量 BMI 35以上「高度肥満」の方:現在の体重から5-10 %の減量 を目指しましょう。 2.食事 1日にご自身がとって良いカロリー(kcal)を計算してみましょう。
- 軽労働の方(デスクワーク、家事のみ):25~30 kcal×適正体重(kg)
- 中間労働の方(立ち仕事、家事以外に家族の世話がある):30~35 kcal×適正体重(kg)
- 重労働の方(力仕事が多い):35~ kcal×適正体重(kg)
食事内容については、食品交換表という表を使って1日の食事で何をどのくらい食べたらよいかを決めるのが最適です。 難しい場合は以下のことを参考に食事を工夫してみましょう。また、最近は外食でもカロリーを表示してあることが多いので、カロリーを見てから食べるものを決めましょう。 糖尿病の方は高血圧や脂質異常症も合併しやすいので、それらに対応した食事も示してあります。 ・ 食事中の血糖値の急上昇を避けるために、野菜を先に食べましょう。 ・ 甘いものは控えましょう。 甘いものだけでなく、塩っぽいお煎餅も食べ過ぎはカロリーや塩分のとり過ぎになります。果物も血糖値を上げやすいので、食べ過ぎに注意しましょう。 おやつをどうしても食べたい時は、少量を食事の直後に食べましょう。間食として食事と食事の間に食べてしまうと、血糖値が1日の内で何度も急上昇してしまい、糖尿病が悪化しやすいです。 ・ 積極的に食べた方がいいもの(魚、食物繊維が多いもの) 魚、大豆、野菜、きのこ、こんにゃく、海藻、玄米、麦ごはん、雑穀 などを多めにとりましょう。乳製品、果物、卵は適量を。 ・ 動物性脂肪・コレステロールの摂取を減らす。 お肉の脂身、鶏肉の皮、バター、マーガリン、洋菓子、スナック菓子、揚げ菓子、レバー・臓物、たらこ・いくら等の魚卵 などを減らす ・ 塩分は1日6g未満(一度、自宅のはかりで6gをはかってみましょう) 減塩する為の工夫として、香辛料やハーブ、減塩味噌・醤油・ポン酢、レモンなどを使ってみましょう(スーパーでも減塩調味料を売っています) 3.運動 有酸素運動:速歩やマラソン、水泳、サイクリングのようなややきつい、と思う程度の運動が有効です。1日20分以上行うことがお勧めです。 筋力トレーニング:足や背中の筋肉を強くすることでインスリンの効果が高まります。 * 糖尿病以外に心臓病、腎臓病のある方や、眼の合併症がある方、糖尿病の状態が悪い方は、食事や運動に制限があることもあるので、医師にご確認ください。 3.飲酒量は減らして、たばこは禁煙しましょう。 4.処方されたお薬は、毎日決まった時刻に使いましょう。 5.定期的に眼科を受診しましょう。眼の合併症(網膜症)は気付かないうちに進行します。糖尿病の治療によって悪化する場合もあります。 6. 定期的に歯科を受診しましょう。糖尿病の方は歯周病になりやすいことが知られています。歯肉の炎症は糖尿病を悪化させ、歯を失うことで噛むことができなくなると血糖値が上がりやすくなります。 《お薬について》 糖尿病の治療のお薬には、飲み薬や注射があります。 飲み薬の中でも色々な効き方をするものがあるので、必ず指定された時に飲むようにしてください。例えば食「前」に飲むように指定されたお薬は、食事の直前に飲むことで効果が出るものなので、必ず食事の前に飲むようにしましょう。注射についても、必ず指定された量を決められた時間に打つようにしてください。 《注意すること》 糖尿病の方では、血糖値の管理がとても重要になります。 その際に、血糖値が極端に高すぎたり低すぎたりすると命に関わることもあるので、次のことを知っておいて下さい。 1.低血糖症状 について お薬を使って治療をしている方は、具合が悪くてほとんど食べられないことが続いた時にお薬を使い続けると、低血糖を起こすことがあります。また、食べられていても仕事や運動をし過ぎて糖が消費されて、低血糖になることもあります。 低血糖になると、心臓がドキドキする、冷や汗が出る、気持ち悪い、手が震える、頭が痛い、眠い などの症状が出ます。普段と違うこれらの症状が出た場合には、飴を一粒なめたりジュースを飲んだりしてください。それでも症状が続く場合には、速やかに受診してください。 万が一に備えて、外出の際は飴などを持ち歩くことをおすすめします。 もし、具合が悪くて長く食べられないようなことがあれば、お薬を使い続けるべきか医師にご相談ください。 2.異常な高血糖 について 糖尿病の治療経過が良い方はさほど心配する必要はありませんが、まれにひどい感染症やストレス、下痢、脱水、インスリン治療の中断・減量などが引き金となり、極端な高血糖になることがあります。 症状としては、口が乾く、脈が速くなる、血圧が低くなる、気持ち悪くなったりお腹が痛くなったりする、ぼーっとする などがあります。 低血糖の症状と似ていますが、低血糖と違い冷や汗が出ません。 普段はさほど心配しなくて良いのですが、もし上に書いてあるきっかけと症状に当てはまることがあれば、速やかに受診してください。 3.お薬の飲み忘れ、打ち忘れ について ・飲み薬を飲み忘れたことに気付いたら… 食前のお薬は、気付いたのが食事中や食直後であれば、その時に飲んでください。食後のお薬は、気付いたのが食後1~2時間以内であればその時に飲み、それ以降であれば次の食事の時からまた飲んでください。次の食事の時に、忘れた分もまとめて飲まないように! ・インスリンを打ち忘れたことに気付いたら… インスリンの種類や量によって対応が異なるので、忘れてしまった場合の対応を事前に医師に相談しておきましょう。 ・インスリン以外の注射薬は、食事とは関係なくいつ打ってもよいです。 最後に 糖尿病は、合併症を起こさないためにも10年単位でよい状態を保っていくことが大切です。初めから生活習慣の改善をがんばり過ぎると疲れてしまうこともあるので、無理のない範囲で出来ることから始めていきましょう。例えば…運動は週に数日でもかまいません。ひかえた方がよいとされる食べ物も、全く食べてはいけないわけではないので、時々は食べてもかまいません。 お薬をうっかり飲み忘れてしまっても、そういう時もあるでしょう。タバコも自分だけでやめるのが難しければ、医師に相談してください。コツは、「多少細くても長く続けること」です。病院の次の受診までにうまく出来ないことがあっても、嫌にならずにコツコツ通院を続け、出来ることをやっていきましょう。医師や看護師が相談にのりますので、あなたの今後の生活をよくしていくために、一緒に取り組んでいきましょう。