脂質異常症
《脂質異常症とは》
脂質異常症は、以前は高脂血症と呼ばれていました。
脂質(大雑把に言うと‘脂(あぶら)’)が多すぎたり少なすぎたりする病気で、よく知られているものとして
・高LDLコレステロール血症(悪玉コレステロールが高い)
・高TG血症(中性脂肪が高い)
・低HDLコレステロール血症(善玉コレステロールが低い) があります。
この病気の原因として、よく言われている過食・過度の飲酒・運動不足・喫煙などの生活習慣の乱れ以外に、加齢や遺伝性のもの、他の病気からくるもの等があります。
特に女性は、年齢が上がると女性ホルモンの関係で、やせていても脂質異常症になることが多いです。
《コレステロールや中性脂肪が高いと 何が問題なのですか?》
この病気は無症状のことが多く、医師から「生活を見直しましょう。お薬を飲みましょう。」と言われても、調子が悪いわけではないのでぴんとこない方もいらっしゃるかもしれません。そこで、脂質異常を治療しないで放置すると、どんなことが起こり得るか見てみましょう。
脂質異常の状態が続くと…
脂(あぶら)は血液にのって全身をめぐるので、全身の血管や臓器に悪影響を及ぼします。
1.動脈硬化 を引き起こします(血管が狭く、硬くなる)
→ 狭心症、心筋梗塞、脳梗塞 などが起こりえます。
2.まぶたや腱に黄色い脂肪のかたまりが出る、胆石、糖尿病、すい臓の
炎症 などが起こることもあります。
この様に全身に影響が出てから脂質異常症の治療を始めても、狭く硬くなった血管が治ることはなく、特に心臓や脳の病気が起こってしまうと重大な後遺症が残ることもあるのです。脂質異常症の治療はただ数字を下げることが目標ではありません。こうした脂質異常による怖い合併症を防ぐためにも、症状がなくても医師と一緒に治療に取り組んでいきましょう。
《治療について》
脂質異常症は、数ヶ月で治しておしまい…ではなく、合併症を起こさない為にも年単位でよい状態を保っていくことが大切です。初めから生活習慣の改善をがんばり過ぎると疲れてしまうこともあるので、無理のない範囲で出来ることから始めていきましょう。例えば…運動は週に数日でもかまいません。ひかえた方がよいとされる食べ物も、全く食べてはいけないわけではないので、時々は食べてもかまいません。
お薬をうっかり飲み忘れてしまっても、そういう時もあるでしょう。タバコも自分だけでやめるのが難しければ、医師に相談してください。コツは、「多少細くても長く続けること」です。病院の次の受診までにうまく出来ないことがあっても、嫌にならずにコツコツ通院を続け、出来ることをやっていきましょう。医師や看護師が相談にのりますので、あなたの今後の生活をよくしていくために、一緒に取り組んでいきましょう。
脂質異常のタイプにもよりますが、基本的にまずは食事・運動による数値の改善が最初の治療になります。それでも改善しない場合に、お薬による治療になります。原因が他の病気にある場合は、そちらの治療も行います。脂質の数値をどこまで改善させるかは、年齢や血圧、その他の病気の有無などによって異なるので、医師にご確認下さい。
1.食事
・ 動物性脂肪・コレステロールの摂取を減らす。
お肉の脂身、鶏肉の皮、バター、マーガリン、洋菓子、スナック菓子、揚げ
菓子、レバー・臓物、たらこ・いくら等の魚卵 などを減らす
・ 積極的に食べた方がいいもの(魚、食物繊維が多いもの)
魚、大豆、野菜、きのこ、こんにゃく、海藻、玄米、麦ごはん、雑穀 など
を多めにとりましょう。乳製品、果物、卵は適量を。
・ 塩分は1日6g未満(一度、自宅のはかりで6gをはかってみましょう)
減塩する為の工夫として、香辛料やハーブ、減塩味噌・醤油・ポン酢、
レモンなどを使ってみましょう(スーパーでも減塩調味料を売っています)
2.運動
体重が多い方は適正体重になるよう、速歩やマラソン、水泳、
サイクリングのような有酸素運動も取り入れましょう。
BMI 25以上「肥満」の方:3-6か月で、現在の体重から3 %以上の減量
BMI 35以上「高度肥満」の方:現在の体重から5-10 %の減量
を目指しましょう。
3.飲酒量は減らして、たばこは禁煙しましょう。
4.処方されたお薬は、毎日決まった時刻に飲みましょう。
* 脂質異常症以外に糖尿病や心臓病、腎臓病のある方は、食事や運動に制限があることもあるので、医師にご確認ください。