新規肺炎球菌ワクチンについて
2023年4月10日に肺炎球菌15価ワクチン「バクニュバンス」が発売されました。
これまでの肺炎球菌ワクチンとの違い、お勧めの接種方法について解説します。
【肺炎球菌感染症について】
肺炎球菌という細菌によって引き起こされる病気です。主に気道の分泌物に含まれ、唾液などを通じて飛沫感染します。この菌は、日本人の約3~5%の高齢者では鼻や喉の奥に菌が常在しているとされますが、何らかのきっかけで進展することで、気管支炎、肺炎、敗血症などの重い合併症を起こすことがあります。(厚生労働省HP)
本来無菌の臓器(髄液や血液)に肺炎球菌が検出される侵襲性肺炎球菌感染症は致死的な病態で致死率は19%と報告されています。(東京都HP)
【リスクの高い人とは】
侵襲性肺炎球菌感染症は健康な人は10万人あたり0.6-1.9人のところ、がん患者さんは8.6-28.8人と報告されています(国立がんセンター東病院HP)。
また、手術などで脾臓を摘出した患者さんもリスクが高いとされています。(脾臓摘出後の患者さんに対するニューモバックスNPの予防接種は保険給付の対象のため事故や胃癌などの手術で脾臓を摘出した患者さんはご相談ください。)
【15価肺炎球菌ワクチンとは】
肺炎球菌には93種類の血清型があります。このうち定期接種で使用される「ニューモバックスNP(23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン)」は、23種類の血清型に効果があります。
プレベナーはニューモバックスNPと共通する12種類に加えて1種類(6A)に対する免疫を誘導するワクチンです。安全性はニューモバックスNPとほぼ同等で免疫を作る作用は同等もしくは優れていると考えられます。
今回販売が開始されたバクニュバンスは50 歳以上を対象とした第3相比較試験で共通する 13 血清型については変わらず、バクニュバンスのみに含有される22F、33Fと3型に対して強い免疫を作ることがわかりました。
(図:肺炎球菌各種ワクチンのカバーしている血清型)
【米国における肺炎球菌ワクチンの接種についての考え方】
2022 年 1 月に米国 CDC は 65 歳以上の全ての成人、肺炎球菌ワクチンを未接種あるいは接種歴が不明で 19〜64 歳の慢性疾病のある成人に対して バクニュバンスとニューモバックスの連続接種を推奨しています。これはバクニュバンス接種後に血清型に対応する免疫が誘導され、その後ニューモバックスの接種によって両ワクチンに共通する血清型に対する免疫をより強く誘導する(ブースター効果)が期待されるためです。
【日本感染症学会からのお勧め】
「65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方(第4版 2023年3月24日)」によると
ニューモバックス未接種の方:バクニュバンスを接種し1~4年後にニューモバックスを接種する
ニューモバックス接種済みの方:1年以上間をおいてバクニュバンスの接種を考慮。5年後に再度ニューモバックスを接種する
ことがお勧めとされています。
【まとめとお知らせ】
肺炎球菌は特に高齢者では侵襲性肺炎球菌感染症という致死的な病態を引き起こす細菌です。インフルエンザと同様、新型コロナウイルスの流行下では感染者数が減少していましたが、今後は増加する可能性が高い病気と言えます。今回発売されたワクチンは定期接種のワクチンに先行して接種することでより強い免疫を誘導しリスクを減らすことができるワクチンです。特に基礎疾患(がん、心臓・腎臓・肺などの)がある方はぜひ接種をご検討ください。当院では11000円(税込)で接種可能です。